てんかんをテーマにした映画:映画レビュー

…First Do No Harm

邦題:誤診
日本公開時期:1997年
Theater: Youtubeで鑑賞
★★★★★(★5個が最高)

てんかん持ちの一人として、色々と考えさせられる映画

先日、「岡山大学のグループがケトン食療法の仕組みを解明した」という記事を書きました。その後、色々とリサーチを続けていて見つけたのがこの映画です。

First Do No Harmは、実話をもとにした、1997年のアメリカTV映画です。First Do No Harm とは、医者になるときに誓う「ヒポクラテスの誓い」の一部で、「何よりも害を成すなかれ」という意味です。

日本では「誤診」という邦題で放映されているようです。しかし、この誤診という邦題には、ちょっと疑問を覚えます…

しっかりと観れば、誤診とは言い切れない様々な事情が浮き彫りになってくると思うから。原題はその辺をしっかりと汲んで付けられたものだと思うのですけどね。

アメリカ中西部(カンザス州)の農村地帯に住む幸せなレイミュラー一家。母親、ローリーをメリル・ストリープが演じています。父親はトラックドライバーで、3人の子供がいます。豊かではないけど、幸せな暮らしです。

ローリーは農機具店で働いているのですが、ある日子供の学校から連絡を受けます。ロビーが突然転んだというのです。

これがロビーのてんかん発作の幕開けでした。ロビーのてんかんはとてもひどいもので、毎日何度も起こります。病院では薬をロビーに大量に投与。ロビーは強い副作用に悩まされるようになります。

さらに、家族には保険がなかったため、病院を転院し、家も抵当に取られ、父親もより危険なタイプのトラックを長時間運転するなどして必死に働きますが、財政的にも逼迫します。

上の2人の子供も、母はほとんどロビーにかかりっきりになり、家族で夢見ていたハワイ旅行もそれどころではなくなるなど、大きな困難を強いられることになります。でも、弟のことが好きで、少し反発をしつつも、健気に耐えるのです(泣)。

ロビーは全く良くなる様子もなく、医者は成功率の低い外科手術を勧めます。母親としての本能で、どうしても納得できないローリーは、わらにもすがる思いで図書館へ。必死で文献を読みつつ、ついに見つけたのがケトン食療法だったのです。

ローリーは田舎ののんびりとした女性です。その彼女が猛烈な努力で驚くほどの文献を読み、ケトン食療法を知ると、ものすごい行動力を見せます。メリル・ストリープは演技はとして知られていますが、この映画でも磐石で骨太な演技を見せてくれます。

この映画が作られた頃はまだ、今ほどてんかんの研究が進んでいなかったため、主治医はケトン食療法などはまやかしといった感じで、一笑に伏すのですが、ローリーは諦めません。

ロビーを病室から連れ出す誘拐もどきまで企て(失敗に終わりますが)、ついに家族の友人の医師と優しい看護師さんの協力もあり、ケトン食療法のパイオニア、ボルティモアのジョンズ・ホプキンズ大学にロビーを連れて行くことに成功します。

…というお話です。こちらは今から20年近くも前のお話なので、事情はかなり変わっているとは思いますが、母の愛、家族愛、保険の重要さ、セカンド・オピニオンの重要さ、お医者さんのあり方、患者の家族としてのあり方…など、いろいろ考えさせられてしまいました。

この映画の監督は、自らの子どもが難治性のてんかん患者で、ケトン食療法により発作を抑えることができた経験からこの映画を作ったそうです。

また、この映画には、実際にケトン食療法で何年もてんかんを抑えるのに成功している人々がたくさんカメオ出演しているんです。

私自身、去年に大人のてんかんと診断され、幸いなことに薬がとても効いたため、ここしばらく発作に悩まされていません。医学の進歩に心から感謝するとともに、てんかん患者の小さな子どもとそのご家族はどれだけ大変かと思うと、たまらなく胸が痛みました。

ぜひ皆さんに診ていただきたい、地味ながら重厚で素晴らしい映画だと思います。