ハワイの人々をリアルに描いた名作

名もなき人々の思いを紡いだ物語:
An Offering of Rice

今日は午前中に仕事を終え、午後からは最近亡くなった方を見送る会に出席しました。しみじみとあたたかい集いで、悲しい気持ちもありながらも、ご遺族の方々の新たな旅立ちに立ち会うことができたような、ある意味涼やかな気分で会場を後にしました。

家に帰り、10年ぶりにページを開いたのが、こちらの本”An Offering of Rice”です。作者はMavis Haraさんという日系女性で、ハワイのバンブーリッジプレスから出版された短編集です。見送る会から家に向かう車の中で、この本のなかの、ある詩のことを思い出し、もう一度読みたくなったのです。

この本は、短編、詩、散文など形式は様々ですが、それぞれにはハワイの普通の人々(ほとんどが日系の人々)がリアルに描かれています。1920年代のプランテーション農場から、現代にいたるまで、時代は様々ですが、その中に共通しているのが、家族とアイデンティティ、そして見え隠れする生と死です。

10年ほど前、新聞の書評でこの本のことを知り、日本文化センターに出向いて購入しました。当時は大学院に通っていて、ものすごくリサーチが忙しい時期ではありましたが、最初のページから最後まで、一瞬たりとも本を置くことができませんでした。

涙が出るわけではないのですが、ヒタヒタとせまってくるような、静かなリアリズムに打たれたのです。

当時は私もまだ、身近な家族や知人、友人の死にはほとんど直面したことがなく、だからこそある程度想像で読むような部分も多かったのですが、今となってはもう少し、美しいだけではない、違った側面も感じられるようになったかと思います。

さて、どうしても読みたくなった詩に話を戻しますね。それは”To Flo”というタイトルのちょっと長めのものです。Floとは女性の名前。フローレンスさんの略でしょうね。

こちらはある女性(たぶん作者?)とその友人のLynnが、亡くなったばかりの友人の家を訪ねる話です。Floは心筋梗塞で、たった48歳の若さで亡くなってしまうのです。親友だった2人は、Floの家を訪ね、食べ物を用意したり、片付け物をしながら立ち働き、ご家族が眠りについた後、そっと家を後にします。

車の中に2人で座り、初めて涙を流し、ティッシュで鼻をかみながら冗談交じりに会話を交わすところで、話は終わります。

当たり前のことではありますが、人にはそれぞれ物語があり、歴史があり… その強い思いを、日常の一場面にそっとしのばせながら物語を紡ぐって、なんて素敵なことなんだろうな〜と、この本を読みながらしみじみ思ったのでした。

私もいつかそんな文章がかけるようになれれば、と。